「この利用者さん、〇〇ができない」
介護の現場では、
できないことに目が向きがちです。
歩けない。
食べられない。
言葉が出ない。
でも、
これは介護の現場だけの話ではありません。
人はもともと、
プラスよりマイナスに
目が向きやすい生き物です。
「あの人のここが悪い」
「これができない」
そういうことの方が
自然と目に入ってしまう。
でも本当にそれだけでしょうか。
その人には、
できることがあるはずです。
好きなことがあるはずです。
大切にしていることがあるはずです。
ICFという考え方を知ると、
利用者さんの見方が
大きく変わります。

ICFって、なんか難しそうなイメージがある

難しく感じる理由はね、普段自然にやっていることをわざわざ分類するからだと思うよ。考え方自体はシンプルなんだよね
この記事では、
ICFをできるだけわかりやすく整理していきます。
ICFとは何か
ICF(アイ・シー・エフ)とは、
「国際生活機能分類」のことです。
世界保健機関(WHO)が
2001年に定めた考え方で、
人の生活機能を
総合的に見るための枠組みです。
実はICFが生まれる前、
ICIDH(アイ・シー・アイ・ディー・エイチ)
「国際障害分類」という
考え方がありました。
ICIDHは、
病気や障害によって
「何ができなくなるか」に着目する考え方です。
2001年にWHOがICFを採択したことで
ICIDHから置き換わり、
現在の医療・介護・福祉の現場では
ICFが主流になっています。

ICIDHとICF、何が違うんですか?

簡単に言うと、ICIDHは「できないこと」に着目して、ICFは「できること」に着目する。見る方向が逆なんだよね
そこで生まれたのがICFです。
病気や障害があっても、
その人にできることは何か。
どんな生活を送れるか。
そこに着目します。
これが、
ICFの一番大切な考え方です。

ICFの6つの項目
ICFは6つの項目で
人の生活機能を整理します。
一つひとつ、
わかりやすく説明していきます。
1.健康状態
病気・けが・加齢など、
その人の健康に関わる状態です。
例:糖尿病・骨折・認知症など
ただし、
健康状態だけで
その人のすべてを判断しないことが大切です。
なぜなら、
同じ病気や障害があっても、
できることは人によって全然違うからです。
「認知症だから何もできない」
「骨折したから動けない」
そう決めつけてしまうと、
その人の持っている力や
可能性を見落としてしまいます。
2.心身機能・身体構造
体や心の働きのことです。
筋力・体力・バランス感覚といった
身体的な機能だけでなく、
記憶力・判断力・気分といった
精神的な機能も含まれます。
例:
筋力がある・ない
記憶力がある・ない
歯が丈夫・義歯を使っている
気分が安定している・落ち込みやすい
ここでも大切なのは
「できない・ない」だけでなく、
「残っている力は何か」に
着目することです。
右麻痺があっても
左側を使うことができる。
記憶力が落ちても
長期記憶は残っていることがある。
その残っている力が、
ケアのヒントになります。
3.活動
日常生活の中で
実際にやっていることです。
食事・入浴・着替え・移動など、
日々の生活動作全般が含まれます。
例:
食事を自分で食べられる
着替えを一部手伝えば自分でできる
歩行器を使えば歩ける
声かけがあれば手順通りにできる
大切なのは
「全部できる・できない」ではなく、
「どこまでできるか」「何があればできるか」
を見ることです。
「一人ではできないけど、
声かけがあればできる」
その「できる」を
引き出すことがケアの役割です。
4.参加
社会や地域との関わりのことです。
家族・友人・地域・趣味など、
その人が社会とどうつながっているかを見ます。
例:
家族と食事を楽しむ
近所を散歩する
趣味のサークルに参加する
昔の仲間と電話で話す
参加が減ると、
生活の質が下がりやすくなります。
逆に、
参加できる場があると
意欲や活力につながります。
「この人にとっての参加は何か」を
考えることが大切です。
5.環境因子
その人を取り巻く
物的・人的・社会的な環境のことです。
例:
家族のサポートがある・ない
段差がある・バリアフリーになっている
福祉用具が使える
施設のスタッフとの関係が良好
環境因子は
プラスにもマイナスにも働きます。
段差があれば移動が難しくなる。
でも手すりをつければ
自分で移動できるようになる。
環境を整えることで、
できることが増えることがあります。
これは介護職が
直接働きかけられる部分でもあります。
6.個人因子
その人自身の背景・価値観・好みです。
年齢・性別・生活歴・趣味・習慣・
価値観・信念など、
その人がどんな人生を歩んできたかが含まれます。
例:
食べることが好き
几帳面な性格
昔から料理が得意
仕事一筋で生きてきた
家族をとても大切にしている
個人因子はその人らしさそのものです。
同じ病気・同じ環境でも、
個人因子が違えば
ケアの方向性は変わります。
その人の人生や価値観を知ることが、
より良いケアにつながります。

6つあるけど、全部つながってる感じがするね

そう。どれか一つだけ見るんじゃなくて、全体で見ることが大事なんだよね。健康状態が同じでも、環境が違えばできることが変わる。個人因子が違えば、その人らしさも変わってくる。だから6つ全部合わせてその人を見ていくんだよね
できないではなく、できるに着目する
ICFの6つの項目を見てきました。
ここで大切なのは、
「できないこと」を探すのではなく、
「できること」を探すということです。

病気や障害があっても、その人にはできることがある。そこに目を向けることで、ケアが変わるんだよね
例えば、
「歩けない」ではなく
「車椅子で移動できる」
「食事が食べられない」ではなく
「好きなものなら食欲が出る」
「言葉が出ない」ではなく
「表情で気持ちを伝えられる」
見方を変えるだけで、
その人の可能性が見えてきます。

同じ人を見ているのに、全然違って見えてくるね

そう。ICFは、その人を丸ごと見るためのレンズみたいなものだよ
できることに着目すると、
ケアの方向性も変わります。
「してあげる介護」から
「その人の力を引き出す介護」へ。
それがICFの考え方の核心です。
まとめ
ICFは、
難しい理論ではありません。
その人を全体で見て、
できることに着目するための
考え方です。
6つの項目で整理することで、
利用者さんの見方が変わります。
大切なのは、
6つの項目を単体で見るのではなく、
互いに影響し合っているものとして
見ることです。
環境が変われば活動が変わる。
活動が増えれば参加につながる。
参加が増えれば心身機能にも影響する。
6つはつながっています。
健康状態や障害だけで
判断するのではなく、
その人にできること。
その人らしさ。
その人を取り巻く環境。
全部合わせて見ていく。

まず一つ、担当の利用者さんのできることを探してみよう
あなたが担当している利用者さんで、
「この人、こんなことができるんだ」
と気づいたことはありますか?

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