1.判断と責任を、同じものにしていませんか
中堅職員になると、判断の場面が少しずつ増えていきます。
利用者さんの状態変化。
ヒヤッとする場面。
イレギュラーな出来事。
その場にいる以上、何かを決めなければいけない。
そして、こう思うことはありませんか。
「自分が決めたことだから、上手く行かなかったら自分の責任だ」

“こうしましょう”って言ったあと、もし間違っていたらって…、毎回よぎるんです
この感覚は自然です。
責任感があるからこそ出てくるものです。

では、皆さんに質問!
判断したことと、その結果の責任って、本当に同じものかな?
現場ではこの二つが、無意識に混ざりやすい。
今日はそこを分けて整理していきます。
2.判断とは何か
2-1.現場における判断とは
介護現場における判断は、単なる「Yes/No」の決定ではありません。
一言で言えば、
利用者さんの「いつもとの違い」に気づき、その理由を考え、安全と生活の質(QOL)のバランスを見ながら、今どう動くかを選ぶことです。
介護現場の判断は、大きく二つに分けられます。
ひとつは、緊急時の判断。
もうひとつは、利用者さんのQOLを高めるための判断です。
緊急時は、ほとんど時間がありません。
一方で、QOLに関わる場面では、少し立ち止まって考える時間があります。
かけられる時間は違っても、結論に至るまでの流れは、どちらも大きくは変わりません。

その流れを、次で具体的に見てみましょう。
2-2.具体例でみる判断のプロセス
観察→分析→リスク評価→行動
たとえば、いつも元気に話す利用者さんが、今日は口数が少なく反応が少し鈍い。
まず、「いつもとの違い」に気づく(観察)。
ただの疲れか、体調不良の前兆かを考える(分析)。
様子を見るか、バイタルを測るか、安全面を考える(リスク評価)。
必要であれば、看護師や上長に報告する(行動)。
大きな異変とは限りません。
それでも、そこで立ち止まらず、次につなげようとする。

判断はゴールじゃない。次につなぐための一手なんだよ
2-3.判断が重くなる理由
私たちは無意識のうちに、
“結果まで含めて”判断だと思ってしまいます。
ここで、判断と結果が混ざりはじめます。
判断そのものが難しいのではありません。
その先の結果まで、自分が引き受けるものだと考えてしまうから苦しくなるのです。

全部を背負わなくていい。それが、判断と責任を分けるってことなんだよ
中堅職員が感じやすい“判断のプレッシャー”については、
前回の記事『【介護中堅の判断が怖い理由】采配を振るわなくていい考え方』
でも整理しています。
まだ読んでいない方は、あわせてどうぞ。
3.責任とは何か
3-1.組織としての責任
― 責任は“気持ち”ではなく、“役割の中”にある―
責任は、気持ちの問題ではありません。
役割の問題です。
たとえば、事故が起きたとき。
家族へ説明をする。
体制を見直す。
必要であれば外部への対応も行う。
これらは、管理者や事業所としての責任です。

最終的な結果を引き受けるのは、組織の役割なんだ
だからといって、
現場が何をしてもいいという意味ではありません。
ただ一つ言えるのは、
結果そのものを一人で抱える立場ではない、ということです。
3-2.中堅職員の責任の範囲
中堅職員の責任は、
結果そのものではありません。
責任があるのは、
判断のプロセスに対してです。
・状況をきちんと見たか
・安全を最優先にしたか
・必要な人につないだか
・説明できる理由を持っているか
ここまでです。
結果そのものを、一人で抱えることではありません。
あなたの役割は、
未来を保証することではなく、
その時点でできる最善を尽くすことです。

丁寧に考えて、つないで、共有しているなら、
責任は十分に果たしているよ
4.なぜ中堅は背負いすぎてしまうのか
まず、お伝えしたいのは、
それはあなたの弱さではない、ということです。
・「自分が決めた」という自覚が強い
・自分の一言で現場が動いた、という感覚が残る
・過去に強く責められた経験がある
・「判断=責任」と言われてきた文化がある
・もともと責任感が強い

ちゃんとやろうとする人ほど、“全部自分が悪い”って考えやすいのよね
中堅になると、“決める側にいる”という意識が芽生えます。
その意識は大切なものです。
ただ、そこに結果まで重ねてしまうと、判断は急に重くなります。
背負うことと、向き合うことは違います。
5.判断と責任を分けると、何が変わるのか
5-1.判断が止まりにくくなる
判断と責任を分けて考えられるようになると、
迷い方が変わります。
・相談しやすくなる
・共有しやすくなる
・一人で抱え込まなくなる
その結果、「間違えたらどうしよう」という怖さに足を止められにくくなります。
次へつなぐための一手が、出しやすくなる。
だから、現場も止まりにくくなるのです。
5-2.説明できる判断が信頼につながる
判断には、もう一つ大切な前提があります。
それは、説明できることです。
なぜその選択をしたのか。
何を見て、どう考えたのか。
その理由を言葉にできる判断は、
周囲の納得と信頼につながります。
それが、中堅職員としての責任の果たし方です。

「なんとなく」ではなく、
自分の判断に“理由”があることが大事なんだよ
以前、介護技術の“根拠”について整理した記事があります。
「根拠って何?」と思った方は、こちらも参考にしてみてください。
6.主任だった頃に意識していたこと
私がデイサービスの介護主任になったときのことです。
緊急時の対応、日々の利用者さん対応、マニュアルやルールの判断。
決める場面は一気に増え、その重さを実感しました。
だからこそ、迷いすぎないために、
この三つだけは意識すると決めました。
・イレギュラーな対応をしたときは早めに、そして、こまめに上長に
報告する
・対応やルールを変更したら、必ず現場で共有する
・一人で結論を抱え込まない
デイサービスの主任として、
事業所長には全体の状況を伝え、
必要に応じて相談員や看護職にも声をかけていました。

主任だから全部抱えるんじゃない。主任だからこそ“共有する”んだ
早い段階で周囲に伝えること。
それは責任を軽くすることではありません。
責任を一人で抱え込まず、
組織の中で扱える形にするということです。
判断を早い段階で共有していれば、
責任は個人ではなく組織の中で動きます。
一人に重さが集中しない。
それが、組織として機能するということです。
7.まとめ
判断は、今どう動くかを決めること。
責任は、役割の中で引き受けること。
この二つが混ざると、
次の一手が出にくくなります。
中堅職員の責任は、
・判断から逃げないこと
・説明できる選択をすること
・必要な人につなぐこと
結果を一人で抱え込むことではありません。
その一手に丁寧に向き合えているなら、
あなたはすでに役割を果たしています。
判断は、背負うものではなく、つなぐもの。
それを忘れなければ、現場はきっと、動き続けます。



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