
後輩に、ちゃんと丁寧に教えたはずなのに、
何度も同じことを聞かれたり、同じ失敗をくりかえす。
…そんな経験はありませんか。
後輩が同じことを何度も聞いてきたり、同じ失敗をくり返すと、指導している側は
「もっと丁寧に言えばよかったのかな」
「私の説明が下手だったのかな」
と、悩むことも。
けれど実際には、うまくいかない原因は“伝え方”以外のところにあるケースがとても多いのです。
たとえば、わたしが新人職員だった20年前。当時の教育や指導は、介護の仕事に限らず、だいたいこんな感じでした。
<仕事を教えてもらう時>
・習うより慣れろ
・先輩の動きを見て、仕事を覚えて
・わたしは、こうやる(他の人に教わった時は、その人の言ったことに従って)
・この利用者さんには、このやり方
<仕事を教える時>
・背中を見せる
・自分がいつもやっていることを、そのまま教えればよい
教えてもらう側は、なぜそうするのか、理由を説明されることはほとんどありません。
やり方だけが積み重なっていきます。
そのため、ほんの少し状況や条件が変わっただけで、「これはどうすればいいんだろう?」と判断できなくなり、結果として同じ質問や失敗をくり返してしまうのです。
私が指導する立場になって、改めて気づいたのは、伝わらない原因は「言い方」ではなく、「なぜそれをするのか」という根拠が共有されていないことでした。
このブログでは、これから後輩指導に関わる方に向けて、
・なぜ、教えているのに伝わらないのか
・「それをする理由」を後輩に伝えるために、何が必要なのか
を、ひとつずつ整理していきます。
「後輩指導が難しい」
「同じことで悩み続けている」
そんな方に、少しでもヒントを持ち帰ってもらえたら嬉しいです。
ぜひ、最後までご覧ください。

新人さんや新しく入職した人など、何かしらの指導を受ける立場の人を後輩と表現してまいす。
1.教えているのに、なぜ伝わらないのか
後輩にちゃんと教えているのに、伝わらない。わかってもらえない。
こういうとき、「自分の説明が足りなかったのかな」と振り返る職員は、実はそれほど多くありません。
どちらかというと、
- 「ちゃんと教えたのに」
- 「もう何回も言っているのに」
- 「できていない新人が悪いんじゃないか」
そんな気持ちが先に立ちやすいのが現実です。
いつの間にか「できないこと」が悪になっていく
こうした空気が続くと、少しずつ現場の見え方が変わってきます。
- できない新人が悪い
- 覚えられないのは不真面目や努力不足
- ついてこれないのはこの仕事に向いていないから
いつの間にか、「できないこと」そのものが悪という評価になってしまう。
でも新人や後輩は、サボっているわけでも、やる気がないわけでもありません。
多くの場合、どう判断すればいいのか分からないだけという状態です。
そのまま進むと、現場は疲弊していく
このズレに気づかないまま進むと、
- 指導する側は、「何度言ってもできない」というストレスを抱える
- 教わる側は、「何をしてもダメと言われる」という不安を抱える
お互いに、少しずつ疲弊していきます。
そして最悪の場合、「自分はこの仕事に向いていない」と感じて、現場を離れてしまうことにもつながります。
ここで考えたいのは「誰が悪いか」ではない
本当に見直したいのは、「なぜそれをするのか」という判断の根拠が、ちゃんと共有されているかどうか。
伝わらない原因は、能力や姿勢の問題ではなく、判断材料が渡されていないことにある場合が多いのです。
2.なぜ「利用者さんごとのやり方」を教える形になってしまうのか
指導の場面で、こんな教え方になっていないでしょうか。
- 「右片麻痺のAさんの歩行介助は、こういうやり方だよ」
- 「次に、左片麻痺のBさんはこうね」
※ここではAさんもBさんも、ADLは同じくらいだと仮定します。
教える側としては、「具体的に教えている」つもりですし、その場では確かに分かりやすい。
利用者さんの数だけ「正解」が増えていく
もし利用者さんが100人いれば、後輩は利用者さんの数だけ介助方法を覚える必要が出てきます。
- 似ているけど同じじゃない
- 何が違って、何が同じなのか分からない
- 何を基準に考えればいいのか分からない
こうして判断の軸を持てないまま、現場に立つことになります。
本当は「根拠」は共通している
右片麻痺でも左片麻痺でも、歩行介助で大事になるのは、
- 身体の仕組み
- 動き方
- バランス
- 安全とリスク
といった部分です。
条件は違っても、介助の根拠そのものは共通している。
ここが分かっていれば、自然とカテゴリーで考えられるようになります。
結果、新人は動けなくなっていく
- 一つひとつの対応が別物に見える
- 条件が少し変わると判断が止まる
これは努力不足ではありません。
根拠が最初から整理されて渡されていないことが原因です。
3.根拠がない指導は、方法論しか残らない
根拠が整理されないまま指導が続くと、現場に残るのは「やり方」だけになります。
- この利用者さんはこう
- この場面ではこう
理由が語られていないと、新人に伝わるのは方法論だけです。
方法論だけの指導が生むズレ
- 人によって言っていることが違う
- 何が正しいのか分からなくなる
- 応用がきかない
結果として、新人や後輩は混乱してしまいます。

昨日、Y先輩に教えてもらったやり方でやったら、
今日は、X先輩に『それは違うよ』って言われて…。
結局、何が正しいのか分からなくなりました

やり方は覚えてるけど、“なぜそうするか”は共有されてない感じだよね

指導する側に基準がないと、指導内容がバラバラになる。
指導をうける人は、誰の言葉を信じればいいか分からなくなるよね
どうして「なぜ」が抜け落ちるのか
教える側が悪いわけではありません。
多くの場合、経験で分かっていることを、言葉にしていないだけです。
- 体が覚えている
- なんとなく危ないと分かる
この感覚を言葉にしないと、結果だけが伝わってしまいます。
4.根拠があると「なぜそれをするのか」が伝えられる
根拠が整理されていると、
声かけは自然と変わります。
- 「転倒リスクが高いから今は見守り」
- 「この病気の特性上、いそがせない」
やり方+理由がセットになることで、
後輩は判断の軸を持てるようになります。
根拠は判断の道しるべ
根拠を伝えることは、正解を押しつけることではありません。
- どこを見るか
- 何を優先するか
という道しるべを渡すことです。
指導する側も楽になる
- 人によって説明のブレがなくなる
- 感情で注意しにくくなる
伝えている軸が同じなので、現場が安定していきます。
完璧な説明はいらない
最初から完璧に説明できなくて大丈夫です。
- 少しずつ
- 何度でも
根拠に触れる中で、新人や後輩は自分で考えられるようになっていきます。
5.教えるとは「正解を渡すこと」ではない
教えるとは、正解を押しつけることではありません。
「なぜそう考えるのか」を共有し、一緒に考える土台をつくること。
- 身体の仕組み
- 動き方の原則
- 安全とリスクの考え方
- 病気に対する理解
これらを少しずつ共有していくことで、後輩も、教える側も、現場で楽に立てるようになりますよ。

完璧な説明はいりません。小さな「なぜ」を、今日の現場から一つずつ。

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