なぜ「根拠」があると、介護は伝わりやすくなるのか

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「根拠をもって介護をしよう」

「根拠のある介護が大切」

介護の現場で、一度は耳にしたことがある言葉ではないでしょうか。

でも実際には、
介護の根拠とは何なのかときかれると、

  • 根拠が何を指しているのか、よく分からない
  • 新人指導・後輩指導で、うまく説明できない
  • 日々の介助は、経験や流に任せて行っている

そんな悩みを感じている介護職員さんも多いと思います。

正直に言うと、私自身も同じように悩んでいました。
介護現場で新人や後輩に指導する立場になったとき、
「なぜその介護を選ぶのか」を伝えたいのに、うまく言葉にできなかった経験があります。

決して、考えずに介護をしていたわけではありません。ただ今思えば、判断の根拠を整理し、言語化する視点が足りていなかったのだと思います。

この記事では、
・介護でいう「根拠」とは何なのか
・なぜ、知識がないと根拠を人に伝えられないのか

この2点を、現場経験を交えながらわかりやすく解説していきます。

まる
まる

新人指導やチーム内共有に悩んでいる方のヒントになれば嬉しいです。

1.そもそも、介護の「根拠」とは何か?

1-1 介護における「根拠」の正体

「根拠を持って介護をしよう」と聞くと、理論やエビデンス、難しい知識が必要だと感じてしまう人もいるかも知れません。
でも、まずここで伝えたいのは、介護における根拠は、特別な理論のことではないということです。

1-2 根拠とは「なぜその対応を選んだか」を説明できる理由

介護でいう「根拠」とは、

「なぜ、今この対応を選んだのか」を説明できる理由や材料のことを指します。

たとえば、

  • なぜ、今このタイミングで介助するのか?
  • なぜ、この立ち位置で介助するのか?
  • なぜ、今は手を出さずに見守るのか?

日々行っている介助の一つひとつに対して、「自分なりの理由」を説明できる状態。それが、「根拠のある介護」です。

2.実は、私たちはすでに根拠を考えて介護している

2-1 実は根拠を考えている。ただ言葉にしていないだけ

ここで少し、視点を変えて考えてみてましょう。

私たちは、初めて歩けるようになったとき、理屈を教わってから歩いたわけではありません。

まる
まる

「まず左に重心を傾けて、右足を前に出して。次は反対の足だよ。」
……こんなふうに習った方はおそらくいないはず。

支えられたり、転んだりしながら、「歩く」という動きを身体で覚えていったことでしょう。そしてその後、「転ばないようにしよう」「危ないものは避けよう」といった判断を、自然に身に着けていきます。

介護の現場でも、同じことが起きています。
「安全」を守るため利用者さんの状態を見て瞬時に判断する。この判断は、けっして「勘」ではありません。これまでの経験や知識、目の前の利用者さんの状態が積み重なっているからこそ、迷わず動けているのです。

多くの場合、私たちは既に根拠を持って介護をしています。ただ、普段は「介助をすること」が優先され、なぜそうしたのかを言葉にする機会が少ない。
そのため、新人・中堅・ベテランに関係なく、「説明できない」「言語化できない」という状況が生まれます。

これは、能力や経験年数の問題ではありません。単に、無意識でやっている判断を、まだ言葉にしていないだけなのです。

だから、

「根拠が分からない」「うまく説明できない」

と感じたときは、自分を責める必要はありません。

ここで一度、全体像を整理したい方へ

介護の「根拠」については、実は以前の記事で、「なぜ根拠が必要なのか」「根拠があると何が変わるのか」という全体像を整理しています。

もし、「根拠という言葉自体がまだモヤっとしている」と感じる場合は、先にこちらを読んでもらうと、今回の話がよりつながりやすくなると思います。

▶︎[介護技術の総論|新人・中堅職員に伝えたい介護技術の「根拠」]

3.知識がないと、根拠は組み立てられない

前の章でも触れましたが、私たちは普段、無意識のうちにいろいろな判断をしながら介護をしています。

3-1 知識がないと「説明」にならない

ただ、その判断を人に伝わる形にするためには、もう一つ必要なものがあります。

それが、知識です。

たとえば、こんな場面を想像してみてください。

「今日は見守りにしました」
「今日は声かけを少なめにしています」

現場では、よくある判断です。
判断そのものが間違っているわけではありません。しかし、「どうしてそうしたんですか?」と聞かれたときに、
「なんとなく」
「いつもと違う気がして」

としか答えられないと、相手には判断の理由が伝わりません。

この状態は、
判断はできているけれど、根拠として組み立てられていない状態と言えます。

3-2 知識は「判断を支える言葉」になる

ここでいう知識とは、難しい専門用語を覚えることではありません。

・ 身体の仕組み
・ 動き方の特徴
・ 病気の特性
・ 安全とリスクの考え方

こうした知識があることで、
・ なぜ今は見守るのか
・ なぜ介助の位置はここなのか
・ なぜ声かけを控えたのか

といった判断を、言葉として説明できるようになります。

知識があることで、無意識の判断は
人に伝えられる根拠へと変わっていきます。

4.無意識の判断だけでは、現場で共有できない

4-1 引き継ぎや指導で起こるズレ

現場では、自分一人の判断で完結することばかりではありません。

・他の職員に引き継ぐとき
・ 新人や後輩に説明するとき
・チームで対応をそろえたいとき

こうした場面では、普段、無意識にやっている判断だけでは足りなくなることもあります。

「なぜそうしたのか?」を言葉にできて、はじめて判断は共有可能なものになります。

4-2 「なぜそうしたのか」を言葉にする意味

同じ判断でも、知識があるかどうかで、伝わり方は大きく変わります。
「今日はふらつきが強いから」
「この病気の特性上、疲れやすいから」
「この動きだと転倒リスクが高いから」

判断の筋道が見えると、話し合いは感情論になりにくくなります。

5.根拠が共有されると、業務は標準化されていく

5-1 知識があると、判断の説得力が変わる

根拠が個人の中だけでなく、言葉として共有されるようになると、現場には変化が起きます。

それが、業務の標準化です。

5-2 標準化=マニュアル化ではない

ここでいう標準化は、やり方を一つに決めることではありません。
判断の基準がそろっている状態
これが、介護現場における標準化です。

6.「やり方」ではなく「考え方」がそろう

6-1 判断の基準がそろうと現場は安定する

・何を見て判断するのか
・何を優先するのか
・どこにリスクがあるのか

こうした考え方が共有されると、

・人による説明のブレが減る
・新人が迷いにくくなる
・注意や指導が感情的になりにくくなる

現場は、少しずつ安定していきます。

6-2 完璧な標準化を目指さなくていい

標準化は、最初から完成形を目指すものではありません。大切なのは、考える風土をつくることです。

ただし、これはすぐにできるものではありません。ある程度、時間がかかります。
周りがなかなかうまくできていないと感じても、まずは自分が
・「なぜそうしたのか」を整理する。

それだけでも、迷いや不安は確実に減っていきます。

7.根拠は「正解」を示すものではない

7-1 合言葉は「なぜそれをやるのか?」

最後に、このブログの合言葉を置いておきます。

根拠とは、正解を出すためのものではありません。迷ったときに立ち戻るための土台です。

今日の介助で、「なぜそれをやったのか?」。
この問いを一度、自分に向けてみてください。それが、介護を楽にし、現場を少しずつ整えていきます.

まとめ

介護現場でよく使われる「根拠のある介護」という言葉。
難しそうに感じるかもしれませんが、根拠とは特別な理論や知識そのものではありません。
日々の介助の中で「なぜ今この対応を選んだのか」を説明できる理由を持っていること。それが、介護における根拠です。

私たちは普段、無意識のうちに多くの判断をしながら介護をしています。ただ、その判断を言葉にする機会が少ないため、「説明できない」「伝えられない」と感じてしまうだけなのです。
知識は、その判断を支え、言葉として人に伝えるための土台になります。

根拠が共有されることで、業務は標準化され、現場は少しずつ安定していきます。
完璧な標準化を目指す必要はありません。
まずは、自分の介助を振り返り、「なぜそれをやったのか」を言葉にしてみること。
その積み重ねが、後輩指導を楽にし、チームを整える第一歩になります。

サイト運営者:まるさん
入所施設、通所施設での介護歴20年。実務者研修などの講師歴15年。現在は管理職として奮闘中です! 介護の現場で悩む新人さん、中堅職員さん、介護技能実習生さん達の力になれたら…そんな想いでブログを始めることにしました。 【保有資格】介護福祉士、介護支援専門員
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