介護の現場で「認知症の方」と接する機会は多いですよね。
でも、「認知症って病名なの?」「物忘れと何が違うの?」と聞かれると、意外と説明が難しいものです。認知症ケアの第一歩は、「正しく理解すること」。
先入観や誤った理解のまま関わってしまうと、本人の思いや不安に寄り添うことが難しくなります。
この記事では、認知症とは何か、代表的な種類や症状、そして中核症状とBPSD(行動・心理症状)の違いを、現場の実例を交えながらやさしく整理します。
新人から中堅職員の方が「なぜこの対応が必要なのか」を納得できるように、基本の“き”を丁寧に解説していきます。
認知症とは?

認知症とは、「脳の障害によって記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障が出る状態」をいいます。
つまり「病気の名前」ではなく、「さまざまな原因によって起こる状態の総称」です。
加齢による物忘れとの違い
よく混同されるのが「加齢による物忘れ」との違いです。
たとえば、
- 加齢による物忘れは「朝ごはんに何を食べたかを忘れる」。
- 認知症は「朝ごはんを食べたこと自体を忘れる」。
このように、体験そのものが抜け落ちてしまうのが認知症の特徴です。
また、本人には「忘れている」という自覚がないことも多く、周囲が異変に気づくきっかけになります。

利用者さんが「まだ、ご飯食べてないよ」って、おっしゃた時に、
私は「さっき、食べましたよ!」って、言っちゃった…

あるあるだね。
でも、「食べた」ということを忘れているのが病気による症状だから、
否定したり責めるのではなく、安心を届ける対応が大切なんだよ〜
認知症の代表的な4つの種類
認知症にはいくつかの種類があります。
それぞれ原因となる脳の障害の場所や仕組みが異なり、症状や現れ方も違います。ここでは代表的な4つを紹介します。
1, アルツハイマー型認知症
最も多いタイプで、全体の約6割を占めます。脳の神経細胞が徐々に壊れていくことで記憶障害や見当識障害が進行します。
- 新しいことを覚えられない
- 時間・場所・人の認識があいまいになる
- 同じ話を何度も繰り返す
現場では「昨日も同じ話をされていたな」と思っても、それは意図的ではなく病気によるもの。否定せず、落ち着いて受け止めましょう。
2, 脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血など、脳血管の障害が原因で起こります。
脳のどの部分が損傷したかによって症状が異なり、まだらな症状が特徴です。
- 感情の起伏が激しい
- 記憶の波がある(できる時とできない時)
- 麻痺や言葉の障害を伴うこともある

さっきまでニコニコ穏やかだったのに、急に不機嫌ってことありますよね?

それも症状のひとつ。感情をコントロールする脳の働きが影響してるんだよ
3, レビー小体型認知症
脳に「レビー小体」という異常たんぱく質がたまることで起こるタイプです。幻視(実際にはないものが見える)や体の動きの異常が特徴です。
- はっきりとした幻視(人や虫など)
- 動作が遅くなったり、転びやすくなる
- 意識がはっきりしている時と混乱している時の差が大きい
現場では「幻視への対応」がポイント。見えていないと否定せず、「怖かったですね」と気持ちに寄り添うことが大切です。
4, 前頭側頭型認知症
脳の前頭葉・側頭葉の障害で起こるタイプです。比較的若い世代(40〜60代)にも発症します。
この中には「ピック病(Pick病)」も含まれます。
- 同じ行動を繰り返す(同じ物を買うなど)
- 感情のコントロールが難しくなる(病的な情緒不安定)
- 社会的なルールを守れなくなることがある
ピック病(Pick病)
前頭側頭型認知症の一種で、脳の前頭葉や側頭葉にピック球という異常たんぱく質がたまることで発症します。
感情や社会的行動のコントロールが難しくなり、同じ行動を繰り返したり、突発的な行動をとることがあります。

まるが体験した話なんだけど。
ある日、「牛乳が飲みたいな(^^)」って利用者さんに言われたから、『はい、どうぞ〜(^^)』ってコップに注いで渡したの。
ここまでは、お互い笑顔で和やかな朝の風景だったんだけど…。
洗い物をしようと後ろを向いた直後に――
“ガシャーン!”って。私をかすめてコップが飛んできたんだよね。

えっ!? 急にですか!?

うん。あの時は、本当にびっくりしたよ〜。
でも、その行為はピック病の症状でもある、「気分(情緒)の突発的な変化」が引き起こしたものなんだよね。
もしかしたら、わたしが背を向けたことがきっかけで、不安になったり、何かを思い出したりしたのかもしれないね

そういうとき、つい“なんでそんなことを…”って思っちゃいそうですね

そうだよね。
でもこの行動は、その方の「性格」じゃなく「症状」として受け止めることが大切。
距離をとる、安全を確保する――それもケアの一部なんだ。
中核症状とBPSDを理解しよう
認知症の症状は、大きく「中核症状」と「BPSD(行動・心理症状)」に分けられます。
この違いを理解することで、ケアの見方がぐっと変わります。
1, 中核症状とは
脳の障害そのものによって起こる基本的な症状です。
主に以下のようなものがあります。
- 記憶障害(出来事を覚えられない・忘れてしまう)
- 見当識障害(時間・場所・人がわからなくなる)
- 理解・判断力の低下(状況を正しく把握できない)
- 実行機能障害(段取りや計画が立てられない)
これらはどの認知症にも共通して見られる症状です。
2, BPSD(行動・心理症状)とは
中核症状がベースにあり、そこに環境や心理的要因が重なって現れる症状です。
たとえば以下のような行動が見られます。
- 不安や焦り(「家に帰らなきゃ」など)
- 暴言・暴力
- 徘徊
- 幻覚・妄想
- 睡眠障害
ポイントは、BPSDは本人の“心のサイン”であるということ。
「怒っている」「困らせている」のではなく、「不安」「混乱」「さびしさ」などが背景にあります。

「帰りたい」って言葉も、「家が恋しい」というより「安心したい」って気持ちが強いのかもしれないね。

そうそう。BPSDを『伝え方の一つ』として受け止める視点が、ケアの質を変えていくんだ。
認知症ケアで大切にしたい視点
認知症ケアでは、症状を見るだけでなく、その人の背景や思いを理解することが欠かせません。
たとえば、同じ「徘徊」でも理由は人それぞれです。
- 「家族に会いたい」
- 「仕事に行くつもり」
- 「落ち着けない」
行動の背景にある“目的”を探ることが支援の第一歩です。
また、環境や声かけの工夫も重要です。
- 穏やかなトーンで話す
- 急がせない
- 否定せず共感する
これらはすぐに実践できる基本姿勢です。

「認知症ケア=特別なこと」じゃなくて、日々の関わり方が大事なんですね。

その通り。理解が深まるほど、自然と関わりも変わっていくんだよ
まとめ
認知症は、ひとつの病気ではなく、脳の障害によって起こる“さまざまな状態”の総称です。
代表的な5つの型にはそれぞれ特徴があり、中核症状とBPSDを分けて理解することが、正しいケアの第一歩となります。
介護の現場では、「なぜこの行動をするのか?」という視点を持つことが大切です。
怒る、帰る、拒否する――そのすべてに理由があります。
理解を深めることで、本人の安心や尊厳を守る支援へとつながっていきます。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!
認知症ケアとは、理解が対応の第一歩!
次回は、「認知症の方との関わり方」について、さらに詳しく学んでいきましょう。


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