
認知症の方って、帰宅願望が出たりして「もう帰る!」って怒ること、ありますよね。

ありますね。不安な気持ちに寄り添ったり、意識を他にむけられるように声をかけても、うまくいかないこともありますね…。

大きな声で怒ったり、杖をふりまわしたり…正直、怖く感じるときもあります。そういうときの対応って、本当に難しいです。

そんなお困りのまるるちゃんに、まるの体験談をひとつ。
認知症ケアのヒントになるかな。
介護の現場では、「怒り」や「拒否」といった行動に出会うことがあります。
けれど、その背景には伝わらないもどかしさや自分の誇りを守りたい気持ちが隠れていることも少なくありません。
今回は、かつて厳格な職業に就かれていたCさんとの関わりを通して、「怒りの裏にある思い」を聴くケアについて考えていきます。
1,エピソード① 帰宅願望の裏にある怒り
ある日の午後のこと。
Cさんが「もう帰る!」と強い口調で訴えることがありました。
職員が「もう少ししたら帰ることができますよ」と声をかけても納得されず、
大声を出したり、机を叩いたりと、次第に怒りが高まっていく様子がみてとれました。
そのとき、私はCさんの訴えを遮らずに耳を傾けました。
Cさんの言葉からは「帰れないこと」自体よりも、「自分の気持ちを正しく理解してもらえないこと」や「自分の訴えに対して職員の形式的な応対」に向けられている怒りだと感じました。
「すみません、私の対応が不十分でしたね」と謝りながら話を聴いていくうちに、
次第にCさんの表情がやわらぎ、声のトーンも落ち着いていきました。
2,エピソード② 入浴場面での拒否
入浴のために脱衣所へ案内したときのこと。
Cさんは服を脱ぐことを拒み、「なんでこんなことをしないといけないんだ!」と強い口調、大きな声で怒りだしました。
脱衣所に向かう前から、落ち着かない様子があったと他の職員から聞いていたので、一度その場をを離れて、別の場所でじっくりとCさんのお話を伺うことにしました。
お話に耳を傾けていくうちに、Cさんの口から「仕事はちゃんとやらないとダメだろう」という言葉がこぼれました。
その一言に触れたとき、Cさんにとって“誠実に仕事をすること”がこれまでの人生で何よりも大切にしてきた生き方そのものだと気付かされました。
結局、その日入浴することはできませんでしたが、Cさんはの表情や言動は穏やかになっていました。
3,2つのエピソードからの気づき
2つのエピソードをふりかえると、Cさんが怒ってしまった背景には、単に「やりたくない」という感情だけでなく、当時の私たちの声かけや説明が、Cさんの重んじる「誠実さ」に欠けていた可能性があったのだと感じます。
Cさんは非常に実直な方で、まるで「職場に出勤しているような感覚」でデイサービスを利用されていたのでしょう。
怒っているときには、「そんなんじゃだめだ!」――もっとまじめにやれと、私を部下のように叱ることもありました。
その言葉の裏側には、その裏側には、かつて厳格な職務に邁進してこられた中で培われた、「規律」と「誠実さ」への強い信念が息づいていたのです。
ご家族に伺うと、毎朝「仕事に行ってらっしゃい」と送り出されていたそうです。
Cさんにとってデイサービスは、一人の職業人として、あるいは社会の一員として、ご自身の存在価値を発揮する“仕事場”であり、“自分の存在を発揮する場所”だったのかもしれません。
そして何より、Cさんはどんなに激しい怒りを感じても、他者に手を出すことは絶対にありませんでした。
そこにも、Cさんの「誠実さ」と「自分を律する力」が息づいていました。
4,ふりかえりとまとめ
以前の私は、Cさんのことを「怒りやすい人」「すぐ怒る人」と捉えていたかもしれません。
でも、現実は違いました。
チームで話合う中で、「Cさんは、人生を通じて真面目に仕事に取り組んできた実直な方だ」という共通認識が生まれたのです。
それから私たちは、Cさんを人生の大先輩として「Cさんのおかげで、今日も無事に業務が進んでいます」と、敬意を込めて声をかけるようにしました。
するとCさんは、少し照れたように笑顔を見せたり、送迎時には「気をつけて行ってこいよ」とスタッフを気遣う言葉までかけてくれるようなりました。
また、怒りの場面の背景にあるCさんの「誇り」を職員が理解できたことで、その怒りを、以前より穏やかに、温かく受けとめられるようになっていったのです。
怒りの背景には、必ず理由がある。その「心の声」を感じ取り、チームで共有していくことの大切さを、私はCさんから教わった気がしてなりません。

“怒り”って、その人の心の叫びなんですよね。表面だけ見ていたら見えない気持ちが、ちゃんとあるんです。

その怒りを“叱られる”じゃなくて、“語りかけてもらっている”って受け止められたら、関わりも変わっていきますね。
5,次回予告

最後までお読みいただきありがとうございました。
皆さんの日々の介護のヒントになれば嬉しいです。
次回は、一旦事例はお休みして、今年の振り返りをしたいと思います!


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