食事介助は、介護現場で最も多く行われるケアの一つです。
しかし、ただ「食べさせる」だけでは本当の支援とは言えません。食事には、栄養を摂るだけでなく、「生きる喜び」「人とのつながり」を感じる大切な意味があります。
利用者さんが安心して、そしておいしく食べられるようにするには、姿勢・食形態・声かけなど、すべてに“根拠”がある介助が欠かせません。
また、誤嚥や窒息を防ぐためにも、事前の準備と観察力が求められます。
今回は、「なぜ食事をするのか」という根本から、実際の介助手順、姿勢や食形態の工夫、口腔ケアまでを詳しく解説します。

まるの現場経験も交えながら、“食べる喜び”を支える食事介助を一緒に考えていきましょう。
1.なぜ「食事」をするのか

食事は単に栄養を摂るための行為ではありません。
生きるために必要な「身体的な意味」だけでなく、心を満たし、人とのつながりを感じる「精神的・社会的な意味」もあります。
- 身体的な意味:栄養摂取による生命維持、体力回復、免疫力の維持。
- 精神的な意味:好きなものを食べる喜び、味覚を感じる満足感。
- 社会的な意味:家族や友人、大切な人と一緒に食事をすることで、孤独感を減らし、交流の機会を生む。

介助では“食べる”といって身体的なことだけにフォーカスしがち。精神的な満足感や社会とのつながりといったことにも目を向ける必要があるよ。
2.食事介助の目的
3.食事前の準備と口腔体操
食事は準備から始まります。体調や口腔の状態を確認し、「食べる準備」が整っているかを見極めましょう。

“さあ食べましょう”の前に、ひと口の水と口腔体操!これだけで誤嚥のリスクが全然違いますよ。
4.食事介助の基本と姿勢のポイント
(1)基本姿勢
誤嚥を防ぎ、安全に食べるためには姿勢が最も重要です。
- 座位姿勢が基本:
背もたれに軽くもたれ、体が左右どちらにも傾かないようにします。椅子に深く腰かけ、膝は約90度。足底がしっかり床または足台に着くようにします。
テーブルの高さは、肘を軽く曲げて置ける位置を目安にします。 - 頭部の位置:
顎を軽く引き、喉が開きすぎない角度に。顎が上がると誤嚥しやすくなるため、背もたれやクッションで調整します。 - 車椅子の場合:
ブレーキをかけ、座面に深く腰をかける。骨盤を立てるようにクッションを調整すると安定します。

足が浮いてると体が不安定になって誤嚥しやすくなります。必ず足の裏が床か台に着いてるかチェック!
(2)食前・食後の水分摂取
食前・食後に少量の水分を摂ることで、口腔内の動きや嚥下反射を促し、誤嚥予防になります。
食後の水分摂取は口内の食べかすを流し、口腔ケアの準備にも効果的です。
5.食形態の工夫と義歯の扱い
利用者さんの嚥下能力に合わせて、食形態を調整することが重要です。以下は代表的な形態です。
| 形態 | 内容・特徴 |
| 常食 | 一般的な食事。噛む力・飲み込みが保たれている方向け。 |
| 一口大・刻み食 | 一口で食べやすく、咀嚼の負担を軽減。 |
| 粗きざみ・ミキサー食 | 嚥下機能が低下している方へ。ミキサー食は滑らかで飲み込みやすい。 |
| ソフト食・ゼリー食 | 嚥下が不安定な方に適し、誤嚥予防に有効。 |
また、義歯の装着確認も欠かせません。
外れている、合っていない場合は食べづらさや誤嚥の原因になります。
食後は義歯を外して洗浄し、清潔を保ちましょう。

義歯が合っていないと口の中に痛みを感じることもあるよ。違和感のサインを見逃さないように!
6.介助の実践ポイント
- 一口量は少なく:スプーン半分を目安に。
- 声かけ:「今、魚を食べますね」「ゆっくりどうぞ」など、動作を予告。特にミキサー食は見た目で分かりにくいので説明を添える。
- ペース:利用者の咀嚼・嚥下を確認してから次の一口を。喉仏の上下動を観察する。
- 誤嚥のサイン:むせ・咳・声のかすれ・涙目などがあればすぐ中止し、看護師へ報告。

“もう一口いけるかな”と思ったら、一呼吸おく。焦らないことが誤嚥予防の第一歩ですよ。
7.食後の対応と口腔ケア
- 食後30分は座位保持:誤嚥性肺炎を防ぐため、可能な限り座位を維持。体力がない方はギャッチアップなどで調整。
- 口腔ケア:義歯・歯・舌・頬粘膜を清潔に保つ。残渣や乾燥を防ぎます。
- うがいまたは水分摂取:口腔内をリフレッシュ。
- 体調観察:食後の咳、倦怠感、むせの有無を確認。

誤嚥性肺炎のリスクが高い方ほど、食後の口腔ケアが命を守るケアになります
8.デイサービスと施設での違い
- デイサービス
自宅での食事につなげる視点が大切。自立支援を意識し、「自分で食べられる経験」を積む場に。家庭の味や習慣に近づける工夫もポイント。 - 施設(特養・老健など)
嚥下機能が低下している方が多く、リスク管理と観察力が重要。
看護・栄養・リハビリ職と連携し、“安全+楽しみ”の両立を目指します。
まとめ
食事介助は、利用者さんの「生命」「尊厳」「喜び」を支える大切なケアです。
安全に、そして“おいしく食べられる”よう支援するには、姿勢・食形態・声かけ・環境・口腔ケアのすべてがつながっています。
焦らず、ゆっくり、その人のペースに合わせた介助が、安心と満足につながります。
「食べる時間=その人の生きる時間」。
介助者が根拠をもって関わることで、食事介助は単なる作業ではなく“心を支えるケア”になります。次回は認知症のことについて解説します。

最後までお読みいただきありがとうございました!
次回は認知症のことについて解説します

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